ひとしきり千鶴にニコニコと笑いながら見下ろされた後、町田は自分のプライドを守るために口を開くことにした。

 仁王立ちの千鶴と、跪いている町田という構図はそのままで、町田は言葉をつくる。


「はあ、はあ、は……本当、増田さん、速いね、はあ、ふう……すごく」

「そんなに息きらしながら喋らなくていいよ、も〜。ほら深呼吸して」


 町田とは違い、息など切らしてない千鶴が、心配顔をしながらそう言う。

 町田はそんな言葉に従うように、一呼吸二呼吸、深呼吸をして自分の息を整える。

 はい、深呼吸〜、と言いながら、自分も、すうーっと息を吸う千鶴。そのせいで千鶴の体はそり返り、その豊満な体と胸がさらに強調されることになった。


(ほんと……ほんとうに大きいな)


 千鶴の巨乳を凝視しながら、深呼吸を繰り返す町田。それに気付いているのかいないのか、千鶴は無邪気な笑顔で「吸って〜、はいて〜」と深呼吸のお手本みたいなものを見せている。


「ふう。うんもう大丈夫。ありがとね、増田さん」

「なんのなんのお安い御用ですよ、これくらい」


 やっと息の整った町田は、立ち上がり、千鶴に相対する。

 背は町田のほうが高く、これで今度は町田が千鶴のことを見下ろす形になるのであるが、しかし町田は千鶴に圧倒され、負けている感じを払拭できてはいなかった。


「あ、もうあと少しで授業も終わりか……町田くんはまだ残ってるのある?」

「え? 体力測定のこと? えーと、僕はあと一つだね。握力測定がまだ残ってるよ」

「あ、私も私も。私もあと握力測定だけだよ。町田くんも最初すっごい混んでたから、握力測定あとにまわしたの?」

「うん、そうそう。だってすごい行列だったからね。面倒くさくなっちゃって」

「じゃあ、一緒に行こうか。町田くん」

「そうだね。格技場だったよね、握力測定は」


 2人は格技場へと歩いていく。50m走を計ったグラインドから格技場へは歩いて5分くらいの距離にあり、2人の足取りは自然に速くなる。


(うわ、歩いただけで揺れるんだ)


 並んで歩いている千鶴の胸を盗み見る町田。

 普通に立っていればやはり町田のほうが背が高いのであるが、さきほどから町田の脳裏には千鶴を仰ぎ見た感覚が残っており、自分よりも小柄な千鶴に一種の恐れのようなものさえ感じていた。


(でもやっぱり、僕は増田さんのことが……)


 いつしか町田は千鶴のことをボケーと見つめていた。

 大きな胸に、すらっと伸びた脚線美。そして愛くるしいその横顔。

 それをみつめているうちに町田は千鶴に対して自分がのみこまれていくのを感じた。もう二度と、千鶴から離れられないような、そんな気が……。


「ちょっと、町田くんどこ行くの? ここだよ、格技場は」


 町田の腕を引っ張りながら、格技場を指差す千鶴。


「あ、ごめん」

「えへへへ、いいよいいよ。でも私がいなかったら町田くんはドコかへ行っちゃってたんだからね? 感謝するように」


 えっへんと、またもや胸をはってそう言う千鶴。町田は、ははは、という苦笑いを浮かべながら、


「でも格技場、なんか誰もいなくない?」

「う〜ん、そうだね。誰もいないみたい……ふふふ、私達の貸切だね」


 つまりは2人きりということ。町田はなにか自分の心臓がドキドキと脈打つのを感じた。


「じゃあ早速計ろうか」

「そうだね」


 よいしょ、という感じで町田は握力測定器を手にとる。


「あ、僕からでいいのかな」

「どうぞどうぞ。ここは一つ、男の力ってものを私にみせてくださいよ」


 おどけた感じにそう言う千鶴であったが、町田ははなからそのつもりだった。

 さきほどは50m走でボロ負けしたということもあり、この握力では千鶴にいいところを見せようと張り切っているのである。

 握力という、いわばただ力だけが要求される項目。これで男の自分が負けるはずがなく、さきほどの汚名を返上しようと、町田は気合が入っていた。


「ふ!」


 掛け声とともに、左腕に力をいれる。

 渾身の力で、これ以上ないというくらいに力をこめる。腕はプルプルと震え、これ以上の力はださえないというところまで。


「ふう……よし」

「はい、計測器見せて」


 千鶴に言われたとおりにする。自分としては手ごたえがあったはずだ。おそらく40の後半は確実にいった。これで少しは千鶴のことを見返せたと思うのだが……。


「47……」


 そう、少し困惑気味に呟く千鶴。町田は47という数字に「よし」という掛け声をするが、


「え?……ちょっと町田くん、マジメにやりなよ……47って……」

「え、なんで? じゃあ次は右だね」


 町田は千鶴の信じられないという表情が理解できないようで、そそくさと右の握力を計る。そしてそれを千鶴に渡して、


「……49……じゃあやっぱり本気なんだ」

「増田さん、さっきからどうしたの?」


 いつものニコニコした様子がなく、少し困惑している様子の千鶴。

 しかし次の瞬間には納得したように頷きながら、町田にむかって言葉をつくる。


「うん。よしじゃあ次は私の番だね。町田くんには悪いけど、今回はちょっと勝負にすらならないんじゃないかな」


 ニコニコと笑いを浮かべ、そう言いながら、握力測定器を左腕に握る。今度は町田が千鶴のことを困惑した面持ちでみつめるが、


「えい!」


 かけ声と共に、千鶴の腕に力がこめられる。

 こめられた力は一瞬。千鶴は、ふう〜と息をつくと、測定器を町田に手渡す。


「はい、町田くん」

「う、うん」


 手渡した千鶴はニコニコと余裕な感じで結果を待っている。もう勝ったように、堂々と町田の前に立っていた。

 そしてその測定器の数字とは、


「105!?」

「えへへへ、左は私の勝ちだね。じゃあ右は」

 間髪いれずに、右の測定を開始する千鶴。やはり「えい!」という可愛らしいかけ声と共に、力なんていれてないかのような様子で握力を測定する。


「はい、どうぞ」

「う、うん」


 恐る恐る、町田は計測器の数字を見てみる。


「110!?」

「えへへへ、はい、右も私の勝ち」


 無邪気に笑いながら、町田のことをみつめる千鶴。町田は計測器と千鶴の顔を交互に見ることしかできなかった。


「もう、しっかり鍛えなきゃダメだよ町田くん。私の半分くらいしか握力がないようじゃダメだぞ〜」


 ニコニコと笑いながら、悪意もなくそんなことを言う。

 町田はそんな千鶴に、疑いの眼をその細腕にむけた。

 千鶴の腕は細い腕である。女の子の腕といった細い腕。少しがっしりしている感じもあるが、それはスポーツをやっていればこそで、やはり「女」という範囲をこえることはなかった。


(本当にこの数字は増田さんが……なにかズルをしたのかも……)


 町田はそんなふうに疑いの目線を千鶴にむける。すると、


「あ〜、町田くん。私がズルしたんじゃないかって思ってるでしょ?」

「い、いやそんなことは……」

「まったく、いいもん。今すぐにズルじゃないってことを証明してあげるから」


 そう言うと千鶴は、町田に接近していく。町田は驚いたようにビクついて後ろに逃げようとするのだが、千鶴がそれを許さない。


「えへへへ、こうしてくれる〜」


 千鶴は町田の手に、互いの指を絡ませるようにして握った。右手で町田の左手を、左手で町田の右手を絡むようにして握る。


「泣いて、許してっていっても許してあげないぞ〜」


 おどけたように言う千鶴。町田はただ困惑して、千鶴の体温と接近した千鶴の顔を見つめる事しかできなかった。


「えへへへ、えい!!」

「ガハア!」


 手に力をこめる。その途端、町田の口から悲鳴があがった。


「ほら、ほら、ほら」

「痛い、痛いって!!」


 ニコニコと笑いながら、ギリギリと町田の手を絞めつける千鶴。まだ余裕があるらしく、余裕の表情と笑顔を浮かべていた。

 指を絡また手に力をいれたことによって、町田の指と手首は反り返り、徐々に骨折の危険性があらわれてくる。

 とてつもない力が町田の手にかかっており、その激痛は想像を絶するものがあった。町田の表情は早々に痛みと苦しみに歪み、なんとも情けない表情を浮かべている。


「えへへへ、これで私がズルしてなかったってこと分かったかな、町田くん」

「やめて! 増田さん、痛い、痛いって!」

「あ、分かってないんだ。じゃあ、もっと力いれちゃうぞ」


 えい、とかけ声をかけながら、さらに力をこめる。町田は悲鳴をあげながら、自分の手首がありえない方向に曲がりつつあるのを目視し、その激痛に背筋を震わせた。

 なんとかその激痛から逃れようと、町田はヒザを地面につけてなんとか手首の稼動範囲を保とうと試みる。

 しかしその跪く町田を、千鶴はその上から覆いかぶさるようにして町田の手を絞めつけ、町田が楽になるのを許さない。

 仁王立ちの千鶴と地面に跪く町田。千鶴はニコニコと笑いながら、苦しんでいる町田を見下ろす。


「ほらほら、私はまだ力全然いれてないんだよ? それで分かったのかな町田くんは。私がズルしていないってこと……分からないっていうなら、このままこの手首折っちゃおうかな」


 えへへへ、と笑いながら、さらに腕に力をこめて言う。


「やめて!! やめてーーーー!!」


 ついに町田はボロボロと涙を流し始めてしまった。

 眉を下げ、涙を流し、半水をグジョグジョにする。そんな汚い顔で、町田は跪きながら千鶴に許しを哀願する。


「許して、許してください。お願いします。分かりましたから、分かりましたから……増田さん、許して」

「なにが? なにが分かったのかな」


 楽しそうな感じはそのまま。無邪気な子供が玩具で遊ぶような感じで、千鶴は町田のことを虐め続ける。


「増田さんが、増田さんがズルしてなかったっていと。分かったから」

「えへへへ、ちゃんと私の目を見て言おうね」


 さらに、グイっと力をいれる。


「あぎゃああああッッッ!!」


 町田の手首は限界近くまで反り返り、あと少しでも千鶴が力をいれたら完全に折れてしまうというところまでいきつく。

 町田は言われたとおりに千鶴を見上げ、言われたとおりに千鶴の目をみつめる。

 跪いている町田と、それを見下ろす千鶴。完全にパワーの差が歴然となっており、どちらが上なのかが一目で分かる現在の状況。

 町田は、千鶴の目をみながら、なんとか許しを得ようと心をこめて許しを哀願する。


「増田さんがズルをしなかったってことはよく分かりました。だから…だから許して……!!」


 自分のことを見上げながら言う町田のあまりにも必死な感じを可笑しく感じたのか、千鶴は内心で笑いながら、からかうような声で町田にはなしかける。


「ホントに? ほんとに分かったのかな〜?」

「ほんとうに、ほんとうに分かりましたから、だから」

「ふふふ、良し。許してやろう」


 ふざけたようにそう言うと、千鶴は町田への絞めつけを解いた。

 町田は今だに涙を流し、そして地面に跪きながら開放された手首をさする。

 それを千鶴は満足そうに見下ろしているが、そこには町田を圧倒した事による満足感というよりは、自分がズルをしなかったという証明ができてよかったと思っているような表情だった。

 千鶴は仁王立ちのまま、手を腰にやり胸をはりながら町田に言葉を投げる。


「これで分かってでしょ? 握力は私の方がず〜と強いんだってこと。えへへへ、私の圧勝だね、町田くん」

「う……」


 町田は跪きながら、千鶴のことを見上げる。

 堂々としたその出で立ち。胸をえっへんと突き出しているので、その巨乳具合はさらに強調されていた。

 さらに目を下に向ければ見えてくる、脚線美。

 すぐ目の前にあるその脚はとんでもない魅力を放っており、色気たっぷりのムチムチとした太ももなのであるが、女の子らしいそのふくよかな脚は、自分が走りで到底勝つことのできない力をもった脚なのである。

 その千鶴の体、すべてに対して町田は完全に屈服していた。


(勝てない。僕は増田さんには……)


 跪いている町田。眉を下げ、犬のように怯える顔色。それを千鶴は、ニコニコと無邪気に笑いながら見下ろし続けるのであった。


(続く)
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