町田と千鶴の立場が明確になったあの放課後から、すでに一週間が経過していた。
この一週間、町田にとって、息の休まるときはなかったと言っていい。
あの放課後の事件において、千鶴が宣言したことが、町田を今まで苦しめているのであった。
―――えへへ、女の子をエッチな目で見る町田くんのことを調教してあげるよ―――
千鶴は、町田が女の子のことをいやらしい目付きで見ているときに、教育と称して暴力をふるってくるのである。
だから町田は、常に、千鶴の視線に気を配り、自分が地雷を踏まないようにするしかなかった。
終始うつむき、なんとかして女の子の体を見ないように努力する毎日。
自然と視線が女の子を追うのを必死にこらえ、どうにかして千鶴の調教から逃れようと、町田は常に下をむいて過ごしていた。
そのかいがあったのか、あの放課後から今まで、千鶴から暴力をふるわれたことはない。
殴られたり、胸で窒息死させられそうになったりということは、あれから今まで一度たりともなかった。
千鶴も、口実がないことには”調教”をするつもりはないらしい。
あの地獄のような拷問を、町田は回避し続けているのだった。
このまま……
このままなんとか、彼女の調教から逃れ続けられないものか―――町田はそう考えていたのであるが、
「現実はそう甘くないってことか」
ハア、と溜息をつきながら、町田は手にもったその紙を見据えた。
それは学校行事をプリントアウトした紙で、さきほど教師から渡されたものだった。
どうやら、ホームルームの時間に渡すはずだったプリントを、教師が千鶴に渡しそびれたのだらしい。
だからそのプリントを千鶴に届けてくれ―――部活が終わって帰ろうとしていた町田は、そう教師から頼まれたのだった。
「ハア」
もう一度溜息を吐き、町田は覚悟をきめて階段を上り始めた。
グラウンドは山を切り開いた山の上にあり、長い階段をのぼっていかなければならない。
すでに下校時刻はとっくに過ぎ、あたりは暗闇に染まっている。
町田はその暗闇の中を、階段脇に立った照明を頼りにグラウンドへと向かった。
●●●
町田たちの学校は、部活動がさかんなくせに、そのグラウンドは信じられないほどにちいさなものだった。
800メートルトラックと、あとはこじんまりとした敷地があるだけのグラウンド。
当然、この敷地内で体育会系の部活6つが共同して使うことなどできない。
苦肉の策で、町田達の学校では、学校のグラウンドを曜日ごとに交代で使っていた。
そして、今日は野球部が自転車で20分ほどいったところにある河川敷で練習をする日で、かわりにソフトボール部が学校のグラウンドを使える曜日だったのである。
すでに時刻は8時を過ぎ、グラウンドは暗闇に包まれている。
ほとんどの部活は活動を終えているようで、グラウンドには人影がない。
これはもう、千鶴は帰ったのではないかと、ホッと安心する町田なのであるが、次の瞬間、部活棟にまだ明かりがついているのを見て取った。
古ぼけた部室棟のうち、二階の一番左側の部室―――そこは間違いなく、女子ソフトボール部の部室である。
「……いちおう、行っておいたほうがいいよな」
町田は、気がのらなそうに部室棟に入る。
そして、人気のない建物の中を歩いていき、女子ソフトボール部の部室にまでたどりついた。
ノックをすると、中からは「は〜い」と間延びした声。
その能天気な天然っぽい声には聞き覚えがあった。
町田は恐怖で身がすくむのと、その可愛らしい声に心臓が脈動するのを感じながら、部室のドアを開けた。
そこで現れたのは―――
「どうしたの? なにか忘れ物でも……って、あれ? 町田くん?」
「や、やあ」
町田を出迎えたのは、やはり千鶴だった。
その姿を見て、町田は思わず千鶴の胸のを凝視してしまう。
彼女はいま、制服姿ではない。練習が終わったばかりなのか、薄い生地のアンダーシャツをまとっていた。
だからその胸は、制服姿のときとは比べ物にならないほどに、隆起している。
薄い生地のアンダーシャツに、ぴっちりと張り付いたその巨乳。
その魅惑的な曲線を目の前にして、条件反射的に凝視してしまった町田を誰が責められようか。
「どうしたの町田くん。ここ、ソフトボール部の部室だよ?」
「う、うん。分かってるよ。先生から、プリント渡すように頼まれて、それで来たんだけど……」
町田は、かばんからプリントを取り出す。
さきほど、千鶴の胸を凝視していたことに気付かれてないだろうか……町田は戦々恐々として、同級生の少女に恐怖を感じながら、千鶴にそのプリントを手渡した。
「わあ、ありがとう! わざわざ部室まで来てくれたんだね」
「う、うん」
天真爛漫に笑う千鶴の姿。
その笑顔はとても魅力的で、町田は自分の心臓がドクンと鼓動するのを感じた。
どうやら、部室には千鶴以外いないらしい。
つまり、夜の部室にいま、自分達は二人っきりというわけである。
そのシチュエーションとあいまって、町田はますます興奮するのを感じていた。
「町田くん、せっかくなんだから、あがったら」
「え? いいの?」
「うん。今は私しかいないし、別にいいよ」
「そ、それじゃあ……」
町田は、千鶴に対して極力近づかないようにするという、この部室に来るまでかたくなに守っていたことを完全に忘れ去っていた。
夜の部室で千鶴と二人きりという非現実感が、彼から危機意識を奪っているのである。
「わあ、これが女の子の部室か……」
キョロキョロと部室内を見渡しながら、町田は感心したように言葉を漏らした。
自分達の野球部とは比べ物にならないほどに整理整頓された綺麗な部室。
衣服が脱ぎ散らかったりしてないし、各々のロッカーにはきちんとしまわれた道具類が見受けられる。
しかも、男特有の汗臭さというものが感じられず、どこか甘い芳香が部室の中に漂っていた。
その匂いに、町田は陶酔とした気分になるのであるが……
ガチャン。
と。
カギをしめる音が響いた。
「え? 増田さん、なんでカギしめるの?」
いきなり、千鶴は部室のカギをしめた。
そのとき、町田の背筋には、スーっと嫌な汗が流れることになる。
しかし、もう遅い。
夜の部室に二人きりということは、誰もいない密室に二人きりということである。
それは、1週間まえの放課後と、同じシチュエーションではないか。
「えへへ、町田くん」
「ひい」
千鶴はいきなり町田の肩をつかむと、そのまま有無を言わずに壁に押し付けた。
ドスン、と町田の背中が壁にぶつかり、町田は「うっ」とうめき声をあげる。
千鶴は、尚も町田の肩をにぎりしめたままである。
ぎゅうぎゅうと、町田を壁に食い込ませんとして、千鶴は力をこめていった。
「痛い痛い! や、やめて……」
「えへへ、やめないよ。だって町田くん、さっき私の胸、いっぱい見てたよね」
「そ、それは……」
「だからこれは教育です。ほら、押しのけてみたら?」
言葉をきり、千鶴はさらに力をこめた。
町田の体はさらに壁に押し付けられることになる。
抵抗しようにも、そんなことは無理だ。彼女と自分とでは、力の差が歴然である。町田は、自分のことを見つめてくる千鶴の瞳を見つめ返すことしかできなかった。
「相変わらず、力よわいよね〜」
「ひい……お願いします。ゆるして……」
「さいきん、町田くん、わたしのこと避けてたでしょ? それって、こうやって教育されるのが嫌だからなのかな?」
図星だった。
町田は、絶句して言葉をだせない。
「ふふふ、やっぱりね」
「ま、増田さん」
「でも、そういうことされると、わたし傷つくんだよね〜。だから、そのぶん今日は、いっぱい虐めるからね」
「や、やめ、ふっぐううう!」
それまでの力の入れようが子供だましに感じられるほどに、千鶴は力をこめた。
町田の体は壁に押し付けられ、激痛がはしる。
その圧倒的な力を前にして、町田はプルプルと首を横に振りながら、千鶴に対して許しを懇願するしかなかった。
こちらをニコニコと、楽しそうに見つめてくる千鶴。
男をいたぶることが心底楽しいとでもいうような視線が、自分に向けられてくる。
こわい……町田はそう思った。
やはりこの女の子は、自分とはちがう。
自分なんかとは比べ物にならないほど優位な立場にたった存在。
絶対にかなわない相手を見て、町田はガクガクと自分の体が震えるのを感じていた。
「さてと、じゃあこれからどうしようかな〜」
「や、やめ……」
「う〜ん。さっき町田くんは胸見てたから、やっぱり、この前みたいに胸で調教してあげようかな……」
「ひ、ひい」
悲鳴をあげた町田を見て、千鶴は「くすっ」と笑みをこぼす。
獲物が恐怖するさまを見て、楽しそうに笑う千鶴。
さらにその恐怖をあおろうとでも思ったのか、千鶴は自分の胸を、町田の胸板へと押し付けた。
ぐにゅっと、町田の体で、巨乳が潰れる。
その圧倒的なボリュームと、マシュマロのような柔らかさ。
雄であれば、誰しもが夢心地のその快感―――しかし、町田が感じたのは恐怖だった。
「ひいいいいい!」
あの放課後のことが嫌でも思い出される。
自分はこの胸に……この大きな胸にさんざんいたぶられたのだった。
顔面におしつけられ、許しを乞うても相手にされず、窒息と圧迫を繰り返されたあのとき。
まさか、また同じことをされるのではないかと、町田は気が気でなかった。
「えへへ、じゃあ、今日もたっぷりと調教を……って、あれ、いま何時!?」
と。
千鶴は唐突に町田の拘束をとくと、部室内におかれている時計を見た。
午後8時20分。
その時刻を見て、千鶴は残念そうな表情を浮かべた。
「あっちゃ〜。早くかえらないと、門限に間に合わないや。しかたないな〜」
千鶴は、地面に倒れて、恐怖のあまり泣きじゃくる町田に対して、
「町田くん、今日はここまでね。またこんど、いっぱい調教してあげるから」
「ひい、ううっ……ヒイ……」
「ほら、男の子がいつまでも泣かないの。着替えるからちょっと待っててね。途中まで一緒に帰ろうよ」
言うと、千鶴はおもむろに衣服を脱ぎだして着替え始めた。
まるで目の前に町田がいないかのごとく、平然とアンダーシャツを脱ぐ。
下着以外の衣服をすべて脱ぎさった千鶴の姿は、一種神々しいものさえ感じられた。
白い陶器のような肌は、きめが細かくまるで絹のようである。
その大和撫子としての身体とコントラストを描くような、千鶴の発育しきったからだ。
それは、グラビアでもここまでの女性はいないだろうという、魅惑的な体だった。
「よいしょっと」
ブラウスを手にとり、それをおもむろに着ていく。
千鶴は、同級生の男子が目の前にいるというのに、下着姿になってもなんとも思っていないようだった。
平然と、着替えをしていくだけである。
それは、彼女が天然だということではなく……
町田を男としてみていない。
いや、同じ人間としてみていない。
ペット。玩具。
そういう目でしか町田を見ていないからこそ、千鶴は羞恥心を感じていないのだろう。
「ヒイ……ひい、ウウウッッ」
あまりの恐怖に顔を醜く汚して泣きじゃくる町田。
それを見下ろすように、美しい肢体を惜しげもなくさらす千鶴。
ひざまずく奴隷と、それを当然のように見下ろすご主人様。
同級生の少女と少年の間には、確固とした身分の違いというものがあらわれていた。
つづく
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