千鶴と映画に行くことになった。

 町田の頬はさきほどからゆるみっぱなしで、待ち合わせ場所である駅前の噴水広場でそわそわしっぱなしだった。

 同じ家に住んでいるんだから、一緒に行けばいいと思うのだが、千鶴の考えは違うらしかった。

 いわく、せっかくのデートなんだから待ち合わせも楽しまなくちゃとのこと。

 デート。

 千鶴も今日のことをデートだと思ってくれていると思うと、町田はさらなる期待に胸をふくらませるのだった。


「ごめん、まった?」


 声に振り向くと、千鶴がいた。

 町田は彼女の服装を見て、一瞬、時間が止まった気がした。

 短いジーンズ柄のホットパンツは、健康的な脚線美を惜しげもなくさらしていて、その太股に釘付けになる。

 上は短いタンクトップで、へそまで見えていた。

 薄い布地で、その胸のふくらみは男の劣情をあおるのに十分すぎるほどだ。肩のラインと鎖骨の曲線美が町田の心をわしづかみにする。

 周囲の男連中の視線が、すべて千鶴に集まっているかのようだった。


「あ、やっぱり大胆すぎたかな?」


 町田がいつまでもぼーっと千鶴のことを凝視しているせいで、千鶴が珍しく戸惑い気味に言った。


「ちょっと気合いいれてみたんだけど、やっぱりおかしい?」

「そ、そんなことなよ!」


 町田は思わず大きな声をだしていた。


「とっても似合ってる! かわいいよ、すごく!」


 力説する町田に、千鶴はてれたように笑顔を見せた。

 そのまま、千鶴が町田の腕に抱きつく。

 大きな胸が、町田の腕でぐにゃりとゆがんだ。

 ふにゃりと、そのまま腰がとろけそうになる町田はなんとか踏みとどまって、千鶴の言葉を聞いた。


「それじゃあ、映画まで時間があるし、ちょっとまわりを見てみようよ」

「そ、そうだね」

「じゃ、いこー」


 二人は駅前のショッピングモールに入って、いろいろと見てまわった。

 千鶴は町田の腕を決して離すことはなく、町田はなんとか自分のものが反応しないように必死だった。

 千鶴は本当に楽しそうだった。

 靴屋に入り、サンダルを物色する。

 気に入ったものがあったらしく、近くの椅子に座って試着しようとした。

 そのとき、千鶴が町田にこう言ったのだ。


「ねえ、靴、脱がせてよ」


 立ったまま、片足だけを浮かせて、町田に靴を脱がすように命令する。

 そのときの千鶴の瞳は、町田のことを調教するときのトロンとした瞳で、それだけで町田はビクンと反応して命令どおりにした。

 女の子の前に膝まづき、千鶴の靴と靴下を脱がせた。


「履かせて」


 すぐに命令どおりにサンダルをはかせ、それを反対側の足で繰り返した。

 周りには店員や客たちが、自分たちのことを見ている。

 注目されている中、町田は千鶴の命令どおりに、彼女の脚に奉仕したのだった。

 さらに、千鶴の暴走はとまらない。

 彼女は町田を下着ショップに連れていった。

 落ち着かない様子の町田をあざわらうかのように、彼女はこう言った。


「さいきん、私の胸、また大きくなっちゃたんだよねー」


 それだけで、町田の視線は千鶴の巨乳に釘付けになる。

 ごくっとツバを飲み込んだ町田は、彼女の胸から目がはなせない。


「弘貴くんが毎日おいしいご飯つくってくれるからかな。どんどん大きくなっちゃって、ちょっと身長も伸びた気がするんだよね」

「そ、それはおおげさなんじゃない?」

「ううん。弘貴くんのご飯って栄養満点なんだもん。だから、わたしの体も育っちゃって育っちゃって・・・・・・・前より筋肉とか力も増したんだよ?」

「え?」

「ふふっ、だから、ブラも変えなくちゃいけないんだよねー。ねえ、弘貴くん、君はどんなブラジャーが好きなの?」


 そう言って、町田のことを困らせる。

 あたふたする町田を観察して、千鶴はうれしそうに笑うのだった。


 ●●●


 映画は外国のラブストーリーだった。

 CMがひっきりなしにテレビを独占している話題作だ。

 それも、やたらとキスシーンが多い映画だった。

 暗闇の中、千鶴とそのシーンを見ていると、町田は興奮を隠せないでいた。

 スクリーンでは、ヒロインが主人公の唇を情熱的にむさぼり喰っている。

 まさしく食べているという言葉が似合う熱烈なディープキスで、町田はドギマギした。

 隣の千鶴の唇にどうしても意識がむいてしまう。

 ちらっと盗み見ようと、千鶴のほうを見ると、彼女もまた町田のほうを流し目で見ていた。

 二人の視線があい、はっとして視線をはずす。

 スクリーンでは、クライマックスのシーンが流れ始めていた。

 感動的な音楽をBGMとして、夕焼けに燃える海岸で、さらに熱烈なディープキスの様子が映し出される。

 二人は、その光景を穴が空くようにして見ていた。


 ●●●


 映画が終わり、帰宅途中。

 町田は、千鶴の様子がおかしいことに気づいていた。

 なんだか、いつもより元気がないような気がするのだ。

 映画を見る前は、あんなにも自分のことをからかって楽しんでいたのに、今はぼんやりとして、何かを考えている様子だった。

 ときおり、こっちを見て、視線があうと、顔を赤くして下をむいてしまう。

 いつも堂々として、自分のことを調教してくる女王様のような千鶴だったのに、これはどういうことだろうと町田は疑問に思った。

 その疑問は、すぐに解消されることになる。


 *


「ねえ、キス・・・・・しない?」


 千鶴が自宅のリビングで言った。

 帰ってきてもじもじと考えこんだ後の言葉だった。


「え、キス?」

「そう・・・・・・」


 それっきり、千鶴が黙ってしまう。

 しかし、彼女は取り繕うようにして言った。


「いや、あの映画見てさ。ちょっといいなーとか思ってみたりして、だから、私もしてみたいなー、なんて・・・・・」


 歯切れが悪い千鶴だった。

 いつもの様子とは違う彼女を見て、町田はどぎまぎした。


「で、でも、僕なんかでいいの?」

「弘貴くんがいい」


 千鶴が言った。


「弘貴くんがいいの」


 強く断言するような言葉だった。

 町田はかああっと顔が赤くなるのを感じた。

 千鶴と視線をあわせることが恥ずかしくて、下を向いてしまう。

 それでも、彼としても期待してしまうものがあった。

 町田は、コクンと弱々しく頷いた。


「ふふっ」


 千鶴が笑った。

 もじもじした町田の様子を見て、彼女はいつもの余裕を取り戻したようだった。


「弘貴くん、顔真っ赤だよ?」

「う、」

「ふふっ、じゃあしようねー」


 がばっと、千鶴が町田に抱きついた。

 猛獣が草食動物を襲うような荒々しさだった。


「いただきまーす」


 大きく開いた口が、町田の唇をむさぼり喰った。


「ん・・・・!? んふう!!」


 千鶴の舌が町田の口内を蹂躙する。

 信じられないくらいに柔らかい軟体物が、町田の舌にからみついて犯し、徹底的に舐めあげていった。

 町田はいきなりのことにびっくりして、反応らしい反応ができなかった。

 彼としては、唇と唇が触れる程度の可愛らしいキスを考えていたのだ。

 それが、ディープキス。

 激しいというより、荒々しいほど暴力的な口づけに、町田は目を白黒させるしかなかった。


「ぷはあ!」


 千鶴が町田の唇を解放した。

 千鶴と町田の口と口に唾の橋がかかった。

 トロンとして、全身の力が抜けてしまった町田に対して千鶴が言った。


「ちょっと、弘貴くん、もっと舌動かしなよ」

「ん、あ?」

「なに、惚けてるの? ひょっとして、さっきのキスでもう力抜けちゃったの?」


 町田は返答できなかった。

 鼻と鼻がくっつくような至近距離で話しかけてくる千鶴を惚けた顔で見つめ返すしかできない。


「えー、嘘でしょー。ちょっと軽く舌からませただけなのに。弘貴くん、キス弱すぎだよ」

「・・・・んん」

「しょうがないなー。じゃあ、私がリードしてあげるからさ。弘貴くんは、口あけとけばいいよ」


 ぐいっと、千鶴が町田を片手で抱きしめた。

 千鶴のタンクトップを突き出す巨乳が町田の体で潰れる。

 快感にびくっと反応した町田の体を、さらなる快感が襲った。


「ジュッバア・・・・ジュルルル!!」


 唾液音。

 千鶴の舌が町田の中で暴れ回る。

 さきほどまでのディープキスよりも比べものにならないほどの激しさ。

 すぐさま、町田の体からは力が失われて、一人で立っていられなくなった。


 ぎゅううううっ。


 千鶴はさらに町田を抱きしめる力を増し、片手一本で町田のことを支えた。

 その上で、熱烈なキスを降り注いでいく。

 あまりの激しさに、町田の目は女の子みたいに閉じられてしまった。

 その痴態を余すことなく見つめようと、千鶴は両目を開き、目の前の町田の反応をじいっと観察しながら舌を動かす。


(ええと、こんな感じだったよね)


 千鶴はさきほどの映画を思い出しながら舌を動かしていた。

 映画の女優がやっていた技術を、町田でためしていく。

 そのたびに、町田がビクンビクンと快感で痙攣するのを見て、千鶴は自分のやり方が間違っていないことを確認する。

 けっきょく、千鶴は、映画でのキスシーンをすべて反復した。

 満足した千鶴が町田を解放すると、彼は力なく地面に倒れ込んだ。

 それを、仁王立ちの千鶴が見下ろしている。


「うん、こんなもんかな」

「あ・・・・あああ・・・・・」

「けっこうキスもいいもんだね。弘貴くんが弱すぎなきゃ、もっと私も気持ちよいんだろうけどさ」

「ひい・・・・いい・・・・」

「あーあ、もう喋れなくなっちゃったの? ねえ、弘貴くん、女の子にキスだけで足腰たたなくされちゃって、今どんな気分?」

「ああ・・・・あああ・・・・・」


 いつまでも惚けて、ぼおっと快感に身をゆだねている町田を見て、千鶴はふうっとため息をついた。

 その上で、千鶴は怪しく笑った。


「あーあ、こんな弱くちゃ、お仕置きが必要だよねー」


 鼻歌でも歌いそうな上機嫌。

 彼女は町田体をまたいで立ち、町田の顔をしげしげと見下ろした。


「さあってと。調教するね?」


 その言葉で町田は現実に返される。

 逃げようとした町田の顔が、どすんっと潰された。


「むふうう!! むうううう!!」

「あはは、顔面騎乗でーす。町田くんの顔は潰されちゃいましたー」


 千鶴の巨尻が町田の顔面を捕食し、がっちりと押しつぶした。

 町田の顔は完全に千鶴のお尻に圧迫され、潰されてしまっている。


「弘貴くん、肺活量が足りなすぎるからね。ちょっと鍛えなくちゃ」


 千鶴がぐりぐりとお尻を動かし、町田の顔面を潰す。

 力ない町田の抵抗は、千鶴の巨尻がすべて封殺した。

 千鶴はふふっと笑って言った。


「まだまだ、夜は長いんだからさ、たあっぷり、可愛がってあげるよ」


 千鶴の言葉。

 それを聞いて、苦しいはずの町田は、自分の下半身が反応してしまうのを感じた。

つづく