結局、町田の足腰が立つようになったのは昼近くになってからのことだった。

 それまで、町田はさきほどまでの千鶴のディープキスの感触を思い出しながら、悶々と過ごしていた。

 下半身が溶けてしまうような、千鶴の妙技。

 それを思い出すだけで、町田の下半身は反応してしまうのだった。


(それにしても、千鶴ちゃんも、僕のこと好きなんじゃないのかな)


 そんな期待を町田は感じていた。

 好意を寄せていない相手に、わざわざ自分の家に寝泊まりさせないだろうし、こんなすごいキスだってしてこないだろう。

 あんな魅力的な女の子が、自分のことを好きかもしれない。

 そう思うと町田の顔はにやけ、幸せそうな表情となるのだった。

 そんな幸せ絶頂な彼は、これから自分がどんな目にあうのか知る由もなかった。


 *


 時刻は12時をまわっていた。

 回復した町田が学校に赴くと、そんな時間になっていたのだ。

 もう女子ソフト部も、午前の練習も終わり、昼休みの時間だろう。

 町田は階段をのぼってグラウンドにのぼろうとする。

 その階段近くにある部室棟を見て、彼の胸は痛んだ。

 夏休みが始まる前までは、ここの部室棟にある野球部の部室で着替えをしていたのだ。

 もう戻れないのかもしれないなと、町田は諦めにも似た嘆息を漏らした。

 そのまま階段を上る。

 グラウンドが目の前に広がった。

 ソフトボール部のグラウンドと、かつての野球部の場所には、練習用具がおいてあるだけで、誰もいなかった。

 やはり女子部員はお昼休憩をとっているようだ。

 町田はきょろきょろと見渡し、かつて男子ソフト部の部室だったところまで歩いていった。

 部室の前。

 中からは姦しい声が響いていた。

 談笑しているのだろう。なんと言っているかまでは聞こえなかったが、楽しそうな女の子たちの声が聞こえてきた。


(この中にいるんだよな)


 女子ソフト部の1年生たち。

 あの試合でとんでもない力を見せた少女たちだ。

 自分たち男よりも勝った身長や体力。彼女たちに完全に負け、土下座をさせられたときの屈辱はまだ覚えていた。

 ぼくは、そんな彼女たちのところでやっていけるのだろうか。

 不安に思う町田だったが、意を決して部室のドアを開けることにした。

 そこで、町田はとんでもない光景を目の当たりにする。


 *


 ドアを開けた瞬間、中にいた6人の少女たちが一斉にこちらを振り向いた。

 その視線に、町田はびくっと怯えてしまう。

 どうやら、彼女たちは輪になって昼ご飯を食べているようだった。

 体格が良く、スタイル抜群の少女たちが6人、床に座りながらお弁当を食べている。

 そんな中で、町田は一人の少女に目が釘付けになった。

 井上彩華だ。

 女子部員の中でも一番の高身長。暑いからか、アンダーシャツ姿となった彼女の胸の迫力は相当なものがあった。

 茶色の長い髪が天然のウェーブをまとっている。目鼻も整っており、日本人離れした高い鼻が印象的だ。

 一見すると、ヨーロッパの深窓の美少女といった感じ。しかし、その体から感じるのは野生の獣のような躍動感だった。

 町田の目が釘付けになったのは、彼女の大きな尻の下に敷かれているものだった。


「に、人間?」


 思わず言葉にしてしまった町田の言うとおりだった。

 男が地面に横たわっており、その顔面に彩華が座っていた。

 顔面騎乗。

 彩華は男の顔面を座布団にして昼ご飯を食べているのだ。ほかの女子部員もそれを特にとがめる雰囲気もなく、楽しそうに談笑しているだけだった。


「ああ、きたのね」


 彩華が座ったまま言った。

 周囲の女子部員たちも皆、町田に注目している。


「千鶴先輩から話は聞いてるわ。この部室に寝泊まりしたいっていうことよね」

「う、うん。そうだけど」


 しどろもどろに言う町田のことを、彩華が冷徹な瞳でじっと見つめた。


「まあいいわよ。残りの夏休みの間、ここにいても」

「い、いいの?」

「ええ。新しい玩具が必要だからね」

「新しい玩具?」

「そう。ちょうど今日だったから・・・・・ね」


 そこで彼女はグリグリっと、男の顔面を尻で潰した。

 途端にうめき声をあげる男。

 周囲の女子部員たちは、くすくすと意味ありげに笑っていた。

 それだけ伝えると、彩華は町田に興味を失ったみたいだった。

 ほかの女子部員たちも町田のことは気にせず、昼食に戻っていく。

 部室の入り口のところで所在なさげにしていた町田は、彩華の巨尻に押しつぶされている男に釘付けになってしまった。

 暑いからか、練習着である下のズボンを脱いで、黒のスパッツ姿になっている彩華。

 その豊満なお尻のラインが強調され、その大きさは日本人離れしていた。まるでリオのカーニバルに出てきそうな迫力満点の下半身。

 その下に、男の顔面が潰されているのだ。

 豊満な彩華の尻は、男の顔面を完全に覆いかくして潰している。

 おそらく、男はいっさいの呼吸ができないのだろう。

 さきほどから、手足をじたばたさせて空気を求めて暴れている。

 その様子が虫のように滑稽で、周囲の女子たちの嘲笑の的になっていた。


「ぷぷっ、それにしても、男子ソフト部のキャプテンさん、ほんっと弱いよねー」


 女子部員たちが男の情けない姿を見下ろしながら言った。


「言えてる言えてる。この前も、後かたづけが遅いからビンタしてやったらさー、吹っ飛んで気絶しちゃうんだもん。弱すぎだよねー」

「まあでも、ストレス解消にはもってこいかな。首絞めて気絶させまくって遊んでたら、最後には壊れたみたいに必死に命乞いしてきて、もう爆笑だったよ」

「今も、彩華ちゃんのお尻の下でなにもできませんもんねー。ほらー、体ビクビク痙攣させて、もう限界ですかー」


 言葉どおり、男のじたばたとした足掻きは力のないものに変わっていた。

 手は虚空を求めてさまよい、足の動きも弱まっている。

 もう少しで気絶する。そんなときだった。


「ほら、息継ぎ」


 彩華が尻を浮かした。

 途端に必死に息を吸おうとする男。

 狂ったように一呼吸し、再度空気を求めようとする男に彩華の尻が襲いかかった。


 ドッスウウウン!!


「むううううう!!」


 勢いよく体重をこめて男の顔面を潰す彩華。

 一呼吸しか許されなかった男は、当然苦しみもがいて暴れる。

 酸素が少し入ったから気絶は許されない。

 しかし、限界ギリギリまで追いつめられた彼にとっては、少しの酸素では足りるはずもなかった。

 彩華の慈悲を求めて、滑稽に暴れまわる男。

 その抵抗をびくともせずに受け止める彩華の巨尻。

 ピンでとめられた虫が暴れているみたいで、それが少女たちの爆笑を誘った。


「それにしても、彩華はすごいわね」

「うんうん、その大きなお尻とか、さすが日本人離れしてるって感じ」

「確か、お母さんがスウェーデンの人なんだっけ?」


 問いかけに、彩華が答えた。


「ううん、母方の祖母がスウェーデン人なだけよ。母は日本人」

「でも、やっぱり外国の血ともなるとすごいんだね。私もこの学校に入るまでは学校で一番身長高かったけど、彩華は別格だし。それに、胸だってすごいしね」

「ありがと。でも、胸だけは優子に負けるんだよね」


 ちらっと彩華の視線が優子にやられる。

 さきほどから、男虐めに参加することなく、愛想笑いを浮かべていた優子が反応した。


「ちょ、ちょっと彩華ちゃん」

「サイズ、また大きくなったって言ってたもんね。そんなすごいのもってるなら、私の兄貴ぐらい一発で悩殺できると思うんだけど」

「も、もう! なにいってるの!」


 怒ったようになる優子と、それをフォローする彩華。

 それは、他愛もないおしゃべりのようだった。

 しかし、そんな少女たちのやりとりの中でも、男のうめき声と、滑稽なダンスは続いているのだ。

 その異常性に、町田の心は奪われていた。


「そろそろ、昼休憩も終わりね」


 彩華が言って、弁当箱を片づけ始めた。

 周囲の女子部員たちもそれに続く。

 そして、彼女は仕上げにかかった。


「じゃ、そろそろ気絶させてあげるわ」


 言うなり彼女は尻の下の男の顔面を太ももに挟みこんだ。

 むちっとしながらも筋肉質な彩華の脚線美。

 スパッツ姿の彼女の太ももは、男の顔面を完全に挟みこみ、覆い隠すようだった。

 その迫力。

 町田はごくっとツバを飲んだ。


「ゆるしってええ!! 彩華さまあああ!!」


 必死の命乞い。

 それを聞いた彩華の表情はみじんもゆらがなかった。


「・・・・・・・・・」


 バギベギイイ!!


 声がけもせず、唐突に処刑が始まった。

 男を挟み込んだ太ももが膨張したかと思うほど、筋肉の線が現れる。

 柔らかい女性特有の太ももの中に隠されていた筋肉が、男の顔面を潰した。


「ヒギ・・・ああ・・・・・・」


 すぐに男の体からは力がなくなり、気絶した。

 それを確認すると、彩華は太ももを開き、男を解放した。

 立ち上がる彩華。

 白目をむき、口からぶくぶく泡をふいている男。

 彩華は仁王立ちのままそれを見下ろした。

 冷徹な眼。

 女王様然とした雰囲気。

 彼女はそのまま、片足をふりあげると、勢いよく男の顔面を踏みにじった。

 ぐりぐりと、彩華の足裏が男の顔面を蹂躙する。


「せいぜい、今日の夜まで男としての最後を楽しむのね」


 言い終わって、彼女たちは部室を後にしようとする。

 部室のドア前にいた町田に近づくと、彩華が意味ありげに笑って言った。


「あんたも、今日の夜は付き合ってもらうからね。自分が最後にはどんな目にあうか、しっかり見ていてもらうから」


 部室を出ていく彩華。

 その後ろに続く女子部員たちはくすくす笑いながら町田の顔を眺めてくるばかりだった。

 一人だけ、優子だけが申し訳なさそうに町田のことを見つめていた。

 しかし、町田は一瞬で意識を刈り取られてしまった男に注意をとられていた。

 これから自分はどうなってしまうのだろうか。

 その心配に彼の心は不安を覚えた。

 その不安は的中することになる。


(続く)