翌日。

 俺は全身から奈津美の匂いがしてくるのを感じながら授業を受けた。

 その甘い芳香を感じるたび、昨日のことを嫌でも思いだした。

 俺は女の子の・・・・しかも幼なじみの下着になって一日を過ごしたのだ。

 しかも、俺はどこかうれしがっていた。

 俺は奈津美のブラジャーになれてどこか満足感のようなものまで感じていた。

 これが異常でなくてなんであろう。

 いったい俺はどうしてしまったというのか。

 自分にそういう性癖があったのか?

 いや、きっとそうじゃない。

 おそらくこれは調教の成果なのだ。

 俺という男に、女の子に奉仕することが何よりの喜びだと調教してきた奈津美のせいなのだ。

 このままではいけない・・・・俺は真剣にそう思う。

 このまま奈津美の調教を受け、一方的に奈津美の言いなりになってしまっては、いつの日か本当に取り返しのつかないことになってしまうかもしれない。

 女の子に力で敵わないとしても、何かしらの分野で対抗できるものを見つけださなければならない。

 自分が尊厳ある一人の人間だと証明するために、俺は奈津美に勝たなくてはならなかった。

 それが、水泳だ。

 水泳ならば、俺は奈津美に勝てる。

 俺はそう確信していた。

 だから、俺は放課後になったのが心底うれしかった。

 ホームルームの終わりがこれほど待ち遠しかったことは今までになかった。

 放課後、俺は水泳部に入部するために、学校備え付けたのプールに向かうことにした。

 どうやら奈津美も水泳部に入ることにしたらしい。

 カナヅチの奈津美が水泳部とは心配なのだが、やめたほうがいいと言う俺に、奈津美は困ったように笑うだけだった。

 とにかく、俺と奈津美は放課後、学校のプールへと向かった。

 そこで、どんな目にあうかもしらないで・・・・・・。



 ●●●



 学校備え付けのプールは、かなりの大きさをほこっていた。

 まるで、国際試合をするときにも使えるような大きなプールだ。周りをグルリと囲うようにして、観客席まで備え付けられている。

 その場所で、先輩たちが熱心に泳いでいた。

 さすがは年上だけあって、その泳ぎ方一つとっても豪快なものだった。

 とくに女性の先輩の泳ぎは筆舌に尽くしがたいものがあった。

 鍛えられた筋肉と、大きな肩幅。

 その逞しい体から繰り出されるフォームは力強く、見ているだけで圧倒されるものがあった。

 それは俺だけではなく、水泳部に入部希望の同級生たちも同じらしかった。

 一足はやく着替えをすませた男子たちが、プールサイドで先輩たちの泳ぎを見学している

 大人っぽく、色っぽい先輩たちの姿に、俺たちは興奮を隠しきれなくて・・・・


「あ、翔ちゃんたち早かったんだね」


 後ろから声がした。

 その声は奈津美のもので、俺はなんの気なしに振り返った。

 そして、彼女たちの姿を見て、息を呑んだ。


「な、奈津美……」


 そこには、競泳水着を身につけた少女たちがいた。

 同級生の女の子たちだ。

 なかにはクラスメイトの姿も見える。

 その全員が、俺たち男子とは比べものにならないような逞しい体をしていた。

 身長はもちろんのこと、発達した筋肉がまぶしいほどだ。

 けっしてゴツゴツしているわけではない、美しさを兼ねそろえた筋肉の隆起。

 背の高い彼女たちのスラっと伸びた脚は、見たものを虜にするのに十分な魅力をほこっていた。


「へー、男の子もけっこう入部希望者がいるみたいだね」


 奈津美が近づいてきて、俺の隣に並ぶ。

 それだけで、俺の貧弱な体との差が浮き彫りになった。

 俺だって今まで鍛えてきたのだし、虚弱体質というわけではない。

 しかし、どうしたって奈津美と並ばれると、自分の貧弱な体を思い知らされずにはいられなかった。

 目の前のムッチリとした太股。こうしてじかに見てみるとその圧倒的な威圧感は相当なものがあった。

 俺の胴体よりも、奈津美の太もものほうが太いかもしれない。そんな艶かしい脚に囚われたらどうなるか……俺は嫌が応にも想像するしかなかった。

 腹筋もどこかわれていて、逞しい感じがする。

 腕についた筋力もまた、俺たち男子とは比べ物にならなかった。

 それでいて、奈津美の体からはゴツゴツとした見苦しさは感じられない。あくまでも健康な女性の体だ。柔らかそうに発育した女性の体に、逞しい筋力がさらなる魅力をそえている感じがした。

 ……とくに、奈津美はその大きな胸がさらに強調される結果になっていた。

 競泳水着の胸の部分が、男を威圧するように突き出ている。

 それが歩くたびに揺れて、しかも俺と奈津美の身長差から、それがちょうど俺の目の前にあるものだから、目のやりばに困ってしまった。


「どうしたの、翔ちゃん。さっきから奈津美の体、そんなに見つめて」

「え? あ、いや・・・・・・なんでもないよ」

「もしかして、奈津美の体に見惚れてたのかな?」


 ずばりその通りのことを言われて、俺は言葉につまってしまう。

 そんな俺の態度に、奈津美は嬉しそうに破顔して言った。


「翔ちゃんより、奈津美のほうが筋力とか発達してるもんね。やっぱり、男の子って、そういう体に憧れたりするのかな」

「べ、別にそんなことは……」

「ほら、見て、翔ちゃん」


 恥ずかしそうにしながら、奈津美は二の腕にぐいっと力をいれてみせた。

 途端に、皮下脂肪の下に隠されていた筋肉が誇示される。女の子の柔らかそうな筋肉浮き出た。それを見せ付けるように、奈津美はさらに俺に近づいてくる。


「奈津美の腕のほうが翔ちゃんのよりずっと太いし逞しいよね。それに、脚だって」


 奈津美はそのまま、俺の脚の隣に、自分の発達しきった生脚を並べた。

 貧弱な男の細い脚に、女の子の発達した、大人の脚が密着している。

 そのすべすべとした感触を感じながら、俺は大人と子供の差ほどはある男女の脚の違いをまざまざと見せ付けられるのだった。


「ふふふ、翔ちゃんの脚、やっぱり短いね」

「な、奈津美……」

「それに、太さも全然違うよね? ひょっとしたら、奈津美の太もも、翔ちゃんの胴体より太いんじゃない?」


 さきほど考えていたことを奈津美に言い当てられ、ビクっと俺の体は震えた。

 それをクスクスと笑いながら見下ろす奈津美。

 翔ちゃんの考えていることなんてお見通しだよ、と、そう言われた気がした。

 そのまま、奈津美はその長い手を俺の頭にのせると、愛おしげに、俺の頭を撫で始めた。


「翔ちゃん、可愛いね」

「……な、なにを」

「ふふふ、撫で撫でだよ?」

「や、やめろよ、おい」


 優しい手つきで俺の頭を撫でる奈津美。

 さすがに恥ずかしくて逃げようとするのだが、奈津美はそれを許さず、俺の体をぎゅうっと左手で抱きしめ、残った右手で愛撫を繰り返す。

 正面から抱き合っているので、俺の顔面は、奈津美の爆乳の中に埋もれてしまっていた。

 その身長差と息苦しさを感じながら、俺は段々と、自分の体から力がなくなっていくのを感じた。

 奈津美の甘い芳香が体を満たしていく。

 それは昨日と同じ体験だった。肺の中から全身を奈津美に支配されていく。

 俺は、恍惚とした表情を浮かべ、奈津美の愛撫に身を任せるしかなかった。




  

「そろったようね」


 声がして、プールからあがった女性の先輩が口を開いた。

 ショートカットの黒髪がよく似合った魅力的な女性だ。

 奈津美はその言葉にやっと俺を放した。同時、プールからあがった女性が、自分が水泳部の部長だという自己紹介の後に言った。


「では、さっそくだけど貴方たちの実力を見てみようかしら。順番に50メートル、クロールで泳いでもらえる? あ、泳げない人は専用のカリキュラムがあるから、そのままでいいわよ」


 言われた言葉に、積極的な女子たちが泳ごうとする。奈津美もまた、その列に加わった。

 と、そんな彼女たちにむかって先輩が、


「女の子は泳がなくてもいいわよ。うまくいくにきまってるんだから。男の子だけ泳ぎなさい」


 高圧そうに言う先輩。

 怪訝に思わなくもなかったが、女の子の・・・ましてや先輩の命令は絶対だ。

 男子が順に泳ぎ始めた。

 すぐに俺の順番になる。

 俺は、チラっと奈津美のことを見つめた。

 さきほどは奈津美の逞しい体に萎縮してしまったが、泳ぎなら負けない。

 見返してやりたい思いで俺は飛び込み台からスタートした。

 奈津美を見返したいという気持ちが勝っていたのか、自分自身、かなりの高タイムでゴールした。


「へえ、なかなかやるわね。貴方、男子の中ではぶっちぎりのトップよ」


 先輩が言う。


「ありがとうございます」

「うん、そうねえ。これなら、先輩の私たちが指導にあたらなくてもやっていけそうね」


 誇らしい気分になる。

 しかし、それも一瞬のことだった。

 先輩は、信じられない言葉を口にした。


「うん、それじゃあ、貴方は1年生の女子に指導を受けなさい。貴方なら、それでも大丈夫でしょうから」

「は?」

「そうねえ・・・・じゃあ、誰にお願いしようかしら」


 俺を無視して1年生の同級生たちを見渡す先輩に、奈津美が手をあげた。


「は、はい! 翔ちゃんの指導なら奈津美がやります」

「そう? じゃあお願いね」


 あっさり決まってしまった。

 俺は、さすがに異議をとなえた。


「せ、先輩。ちょっと待ってください」

「ん? なにかしら?」

「いえ、あの・・・・同級生の女の子に指導を受けるというのは・・・・それに、奈津美は泳げないんですよ」

「泳げない?」

「ええ。小学生の頃からカナヅチで」


 俺の言葉にキョトンとするだけの先輩。

 しかし、彼女は唐突に笑いだした。


「あははッ、何を言い出すかと思えば、女の子が泳げないですって? そんなことあるわけないじゃない」

「え、いやでも・・・・」

「泳げないのは小学生の頃のことでしょう? まったく、じゃあそうね・・・」


 先輩は、思案げに片手を顎にそえて言うと、


「うん。では、貴方と奈津美ちゃんの二人で勝負しなさい。100メートルのクロールでどうかしら」



 ●●●



 俺と奈津美は、飛び込み台にたっていた。

 プールのレーンで泳いでいた先輩たちもあがって、俺たちの勝負を見守る形になっている。


「なあ、奈津美、やめといたほうがいいんじゃないか?」


 隣の奈津美に対して言う。


「おしつけられる形になったけど、お前は泳げないんだから、溺れたら大変だろうが」

「う、うん・・・・翔ちゃん、あのね」

「なんだ?」

「気、落とさないでね」

「は?」


 それ以上の会話はできなく、先輩がピストル片手にあらわれた。

 スタート姿勢をとる。

 俺は、奈津美を心配しながらも、集中した。


 バンッ!


 飛び込む。

 スタートダッシュには自信があり、泳げない奈津美になんか負けない・・・・そう思っていたのだが、


(なに!?)


 豪快な飛び込み・・・・俺のソレと比べれば、まさに大人と子供の飛び込みで、プールに飛び込む奈津美の姿が横にはあった。

 動揺。それをおさえながら、水のなか、クロールを開始する。

 しかし、さらなる動揺が俺をまっていた。


(な、奈津美のやつ、早い・・・!?)


 横のレーン、そこには、一瞬のうちに、俺とかなり差をつけながら泳ぎ続ける奈津美の姿があった。

 豪快。

 腕のストロークと脚のキックが、盛大な水しぶきと泡をのこしながら躍動する。

 男の脚とは比べ物にならないほど逞しい奈津美の脚が、すさまじい推進力をつくっているのを後ろから見つめるしかなかった。

 たちまち、俺と奈津美の差が広がっていった。


(な、なんで・・・・)


 泳げないはずではなかったのか。

 なぜ、こんなにも早いのか。

 分からないながら、必死に泳いだ。

 しかし、力の差は歴然だ。

 まだ俺が25メートルの直線、その半分もこないうちに、奈津美はターンをした。

 そして、すぐさますれ違う。

 その時、奈津美が水の中で俺のことを見つめているのを感じた。

 同情・・・・いや、哀れみの視線だった。


(くそッ!)


 負けられない。

 そう思って必死に泳いだ、ターンして、スタート地点に戻る。

 泳いで泳いで、泳いだ。

 信じられないことに、奈津美は50メートルをあっという間に泳ぎきり、スタート地点でターン―――すぐに、またすれ違った。

 半狂乱になって泳いだ。

 まだ40メートルしか泳いでない。

 なのにどうしてか、すぐ後ろに気配を感じた。

 豪快な泳ぎを続ける幼なじみの少女。

 そして、あっけなく、俺は奈津美に抜かれた。

 信じられなかった。

 水泳で、周回遅れなんて聞いたこともない。

 でも、俺はげんに奈津美に抜かれて・・・

 その逞しい肉体をもって、さらに俺との距離を広げていく。


(う、嘘だ・・・)


 奈津美がゴールする。

 俺はようやく50メートルを泳ぎきって、ターンした。

 水ごしに、女の子たちの嘲笑が聞こえる気がした。

 先輩の女子たちはクスクスと、同級生の女の子・・・・2歳年下の女の子たちは、はばかることなく嘲笑する声が、どこからか聞こえるのだ。


(うううう)


 俺は、誰もいなくなったレーンを、周回遅れという惨めさの中泳ぎ続けるしかなかった。

 泳げないはずの奈津美に、周回遅れにされる。

 そのたびに、奈津美は俺にむかって、哀れみの視線をおくってきたのだ。

 ゴーグルの中で、俺は涙が溢れるのを感じた。

 言い訳しようもないほど全力で泳いだというのに、完膚なきまでに負かされてしまった。

 これだけは絶対に負けないと思っていた水泳で……

 俺は、またしても奈津美に負けたのだ。

 ゴールしたとき、すでに奈津美は飛び込み台の上に立っていた。

 俺は水の中で、飛び込み台の上に立って、心配そうな表情を浮かべた奈津美を見上げるしかなかった。

 俺の中で、何かが折れた瞬間だった。


「さあ、はやくあがってきなさい。勝負はまだ終わってないわよ」


 先輩の声がした。


「え?」

「この際、徹底的に思い知らされなさい。女の子には勝てないというのをその身に、ね」

「そ、そんな」

「奈津美ちゃん。このレーンを今日使っていいから、この子にちゃんと教育してあげなさい。この子、有望そうだからね。男の子としても、水泳選手としてもね。男子の部なら、優勝をめざせるわ」

「はい!」


 元気に言い、奈津美は俺のことをプールから引っ張りあげた。

 片手一本で俺の腕をとり、宙づりにさせて「えい」と持ち上げる。

 俺はなすがままにされるしかなかった。


「な、奈津美・・・・」

「翔ちゃん、ごめんね。悔しいだろうけど、これが現実なんだよ」

「う、うう」

「男の子は、どんなことでも女の子には勝てないの。奈津美がそのこと、翔ちゃんにちゃんと教えてあがるからね」


 そう言い、スタートの体勢をとる奈津美。

 徹底的にやる気なのだろう。

 逞しい体の奈津美が・・・・

 俺よりも、話にならないくらいに泳ぐのが早い奈津美が・・・・

 俺のことを徹底的に負かそうと・・・


 バンッ!


 スタートを告げる音を、俺は絶望的な気持ちで聞くしかなかった。


(続く)
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