教室にはクラスの男子、20名が勢ぞろいしていた。

 窓の外からは、部活動にはげむ女の子達の声が聞こえる。

 普段であるならばボクたち男子も、強制的に入部させられる部活動にいかなければならない時間帯だ。


 徹底的な女尊男卑の学校において、ボクたち男子は、誰よりも早く部室へと赴き、部活の準備にいそしまなければならない。


 少しでも準備に不十分な点があれば、考えたくもない調教が待っている。


 先日も、ボクが所属している空手部で粗相をした男子が、人間サンドバックにされて永遠と殴られていたのを目にしたばかりだ。


 では、何故ボクたちはこうして教室に留まっているのか。

 それは当然、女の子による調教が関係している。

 そう、

 今日、この教室で行われることとは―――






「さあ、とっとと始まるわよ」


 ガラっとドアが開き、開口一番にそう言ったのは、陸上部の練習着姿の女の子だった。

 ふとももが惜しげもなくさらけだされ、彼女のスラっとした生足が強調されている。

 黒髪のロングを、ポニーテールにして束ねており、白いうなじがとても魅力的だ。

 身長が高く、触れれば切れてしまいそうな近寄りがたい雰囲気をもったその女性。

 同級生の、西園寺優華様。

 陸上部期待のホープで、今年高校2年生ながら、インターハイに出場した才女である。

 ボクたち男子より、2歳年下であるというのに、その堂々とした出で立ちには、高貴な雰囲気さえ感じることができる。

 上からけだもの共を見下ろすような絶対零度の視線。

 そんな瞳で優華様は、教室にいる男子を睥睨すると、


「―――なんで貴方たち、裸じゃないの?」


 それまでとは一線を画する視線が、ボクたちを貫いた。

 ギロっとした目付きで、ひどく機嫌を害していることが如実に見て取れる。

 ボクたちはそんな優華様の言葉に、ヘビに睨まれたカエルのように身動きがとれなくなってしまった。


「今日は調教の日でしょ? わざわざ練習を中断して来てあげてるっていうのに、なんで貴方たちは…………今日の責任者は誰?」


 優華様の言葉に、隣に立っている男子がビクっと体を震わせてから、


「す、すみません優華様。い、いますぐに―――」

「……無能はなにをさせても無能ね。ほんと、私達と同じ人間なのかって、疑問に思ってしまうわ」


 独り言のように言う優華様。

 優華様は、今日の責任者の言葉なんて聞いていなかった。

 心底呆れ果てたという視線を浮かべた彼女は、おもむろに片手を振り上げて、


「まあいいわ。じゃあ、はやくヤるわよ」


 と言いながら、片手をクイっと持ち上げた。

 それと同時に、


「ふっぐうううう!?」


 ボクの隣にいた男子が、尋常ならざる力に引っ張られるようにして、優華様の方向へと吹っ飛んでいった。


 そのまま優華様のもとまで吹き飛ぶと、そのまま地面に叩きつけられ、四つん這いにさせられる。


 言っておくが、別に優華様は、男子の体に指一本触れていない。

 にも関わらず、男子の体は優華様の思い通りに動かされるのだ。

 これが男子にはない、女の子にだけ備わった能力である。

 抵抗しようなんて無駄で、抗えるはずがないその力。

 普段はあまり使わないその力を間近で見せられて、ボクたち男子はビクビクと震えるしかなかった。


「ほら、裸になった奴から早くきなさい」


 四つん這いにさせられた男子に座りながら、優華様が言う。

 どうやら、尚も力を行使して、その男のことを人間椅子にしているらしかった。

 苦しげにうめく男の声が聞こえる。

 自分の体を自分の意思で動かせないという恐怖。彼は今、必死に恐怖感と戦っていることだろう。

 自分の命の生殺与奪を握られているという恐怖感を、彼はいまひしひしと感じているに違いなかった。

 優華様に命令され、ボクたち男子は、急いで制服を脱いでいく。

 そこに迷いはない。

 同級生の女の子に命令され、強制的に裸にさせられることに、反抗心を感じることさえない。

 あっという間に、人間椅子になっている男子以外全員が丸裸になる。

 そして、


「お、お願いします」


 言葉とともに、一人の男子生徒が、優華様の足元で土下座した。

 額を床にこすりつけ、これ以上は無理という具合に頭を低くする。


 それを優華様は、冷ややかに―――こんなことは当然という眼で見下ろすのだ。裸の同級生を、侮蔑の眼で見下ろす……。


 僕たち男と、女の子との格差がこれを見れば一目で分かるというものだろう。


「…………」


 無言のまま、優華様は、くいっと少しだけ足をあげた。

 その気配に敏感に反応した土下座中の男子は、顔をあげると、そのに顔を近づけてから―――


「失礼します」


 うやうやしく、その足に口付けをした。

 上履きを履いたままの優華様の足。

 そこに男子生徒は唇をつけ、そして、


「ちゅ、ちゅうう……チュバ……」


 丁寧に、丁寧に舐めあげていく。

 女の子の足に手でもって触れてはいけない。

 そんな絶対遵守の掟があるため、男子生徒は口だけをつかって優華様の足を舐めていく。

 上履きの外側に沿って下を這わせ、じゅばじゅばと唾液音を響かせながら舐めていく。


「…………」


 それを優華様は、冷ややかに見下ろすのだった。

 人間椅子に座り、足を組んでいる優華様。

 陸上部で鍛えあがられたその脚線美は美しいを通り越して畏怖の念すら感じる。

 僕たちより2歳も年下の同級生―――優華様は、面倒くさげに、それでいて厳しい眼で男子生徒の痴態を見下ろしていった。


「はい、貴方はもういいわよ」


 ひとしきり舐めさせると、優華様はそう言って足えお男の口から離した。

 そして、絶対零度の視線で地面に這い蹲る男を見下ろしながら、


「貴方からは女子に対する反抗心を感じ取れなかったわ。その調子で、身の程をわきまえ、精進していきなさい」

「は、はい。ありがとうございますっ!」


 男子生徒は感極まったように礼をして、恍惚とした表情で下がっていった。


 なぜ同級生の女の子に足を舐めさせられ恍惚とした表情を浮かべているのか―――中学校にあがったばかりの僕では理解できなかったかもしれない。


 しかし、今なら彼の気持ちが理解できる。

 なんといっても、女の子にねぎらいの言葉をかけられた……これに尽きるだろう。

 絶対高位な女の子にねぎらいの言葉をかけていただいた。

 これはもう一生に一度の出来事である。

 周りの男子も、うらやましそうな表情を浮かべている者がたくさんいる。

 きっと彼は、今日の出来事を一生忘れないに違いない。


「はい、次」

「は、はいっ。お願いします!」


 男子は、次々に優華様の足を舐めていった。

 尊厳だとか埃だとか、そんなものを感じさせないみじめな光景。

 でも、反抗なんてできるはずがない。


 この4年間、徹底的に調教されてきたボクたちにとって、女の子に反抗しようなんて考えは、思いつきもしないことだった。


 毎日毎日、二歳年下の同級生達に、身も心も犯されつくされる毎日。

 ボクたち男子は、女の子に対して、力でも知性でも、勝てる要素が何一つとしてない。

 どんなに勉強しても、女の子の足元にもおよばない。


 スポーツなんて論外で、10年以上研鑽してきた分野においても、1日練習しただけの女の子には勝てるわけがなかった。


 そうやって、ボクたち男子は、絶対に女の子には勝てないことを思い知らされてきたのだ

 今更、優華様に対して反抗心を見せる男などいるはずも……



 バッチイイイン!!!



 と。

 そのとき、すごい音がした。

 教室に響き渡ったその音は、優華様がご奉仕をしていた男子に対して手をあげた音だった

 拳ではなく、平手で。

 優華様は、すごい勢いで、目の前の男にビンタをした。

 そして、厳しい目付きのまま、地面にひっくり返った男に対して、


「立ちなさい」


 と、悠然と言った。


「ひ、ひい。す、すみま、」

「立ちなさいといったの。聞こえなかった?」

「す、すみません。い、いま、」

「……もういいわ」


 心底あきれ返った優華さまは、またしても≪力≫をつかった。

 ひとりでに男の体が浮かび上がり、優華様の目の前でとまる。

 男はまったく身動きがとれていないようである。

 怯えきった男の表情―――優華様は、そこにされに、平手をくらわせた。



 バッチイイインッ!!



「ひいいい!」

「分からないと思ったら大間違いよ? 貴方、さっきちらっと、私に対して歯向かったでしょ」

「そ、そんな事……」



 バッチイイイン!!



「ひいいいい!!」


 そこからはもう虐殺の嵐だった。

 男のことを宙吊りにしたまま、優華様は連続で往復ビンタを繰り返していく。

 その一撃一撃がとんでもない威力をほこり、男の顔は見る見るうちに脹れあがっていった。

 手の平でビンタし、すぐさま手の甲でビンタする。

 間断なく、その手の動きが残像で見えるほどの速さ。



「ヒギャッ! ひいいいい!!」



 男の頭部が、首から千切れてしまうのではないかと思うほどに左右にゆれる。

 バチン! バチン! というすごい音とともに、男の頭部が力のない人形のように左右に吹き飛ばされていった。

 ときおり、空気中できらめくのは男の汗と……そして歯だろう。

 しだいに血しぶきさえあがり始める。

 キリで噴射したような赤色の液体が、優華様のビンタにあわせて宙に舞う。

 それは、見る者を凍りつかせるにたりる光景だった。


「…………」


 優華様は無言である。

 しかも、別段力をいれているようでもない。

 まるで撫でるように、まったく力を使わずに、男を意のままにする。

 大人と子供。

 いや、これはもはや、比較すること自体がおこがましいような力の差だった。

 ≪力≫をつかわずとも、純粋的な筋力で、男のことを圧倒する女の子。

 あらためてその力を見せ付けられると、ボクたち男子は、ガクガクと震えることしかできなくなってしまった。


「ふう。まあ、これくらいで勘弁してあげるわ」


 と。

 ひとしきり、ビンタをあびせさせると、優華様は気だるげな様子でそういった。

 そして、とたんに男の体が地面に倒れることになる。

 意識を失っているようで、男はそのまま動かなくなった。

 顔が醜く変形し、もはや元はどんな顔をしていたか分からないその男子。

 まぶたが切れ、顔全体が冗談みたいに脹れあがり、まるで化物のような顔になってしまっていた。


「さて。次は誰?」


 優華様は、何事もなかったように、また人間椅子に座った。

 そして、その見事な脚線美を艶かしく組み、足を前にクイっと差し出す。

 その瞳は、もうさきほどの男子のことをこれっぽっちも思っていない。

 堂々たる態度―――支配階級と奴隷階級を思わせる、それは見事な女王としての貫禄だった。



(さからえるはずがない……)



 ボクは、意を決して優華様の前へとでる。

 そして、冷ややかな瞳でボクのことを見つめる彼女の前で、額を地面にこすりつけた。

 許しの声をうけ、顔をあげる。

 そしてボクは、うやうやしく、その同級生の女の子の足を手に取り、一心不乱に舐め始めた。

 忠誠を誓うように……

 あくまでも女の子に従う男子……その格差を感じながら……

 ボクは、優華様の足を舐めさせていただいた。





 これがボクたちの日常的な生活である。

 毎日のように女の子に虐められ、公然と嬲りものにされる。

 男が反抗しないように……

 絶対的な優位に立つ女の子に反抗しないように、骨の髄まで男女間の格差を思い知らさせる。

 同級生の脚を舐めさせられ、

 理不尽な理由でボコボコにされる。

 その調教の仕方は人それぞれだ。

 色々な境遇の男子たちがいるだろう。

 幼馴染に嬲りものにされたり、

 文系の下級生に人間椅子にさせられたり、

 自室で首輪をつけられペットのように飼われたり、

 部活の専用にトイレにさせられたり、

 実の娘にボコボコにされたり……

 その境遇は、様々なものがあるだろう。

 しかし、そんな中にも共通していることがある。

 それは当然、男は女の子には勝てないということ。

 学校生活では、彼女らに毎日のように虐められるということ。

 どんなに境遇が違えど、これだけは……

 これだけは、ボクたち男子に共通した不文律だった。

 

プロローグ編、終了。

幼馴染編へ続く。



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