佐織様の妹さんが来たのは、次の日の夕方のことだった。

 プロレス部が熱心に練習にいそしんでいる場所に、活発そうな一人の少女が顔をだしたのだ。


「すみませ〜ん、この中に、結城さんっていますか!」


 元気のいい声と、天真爛漫といった笑顔。

 大人しい佐織様とは違って、いかにもスポーツ少女といった雰囲気の女の子だった。

 髪型も肩にかからないショートカットで、彼女の活発さをさらに表現していた。


「はい、僕が結城です」


 初等部であっても、女の子に対しては当然に敬語だ。

 佐織様の妹さんなのだから、こちらとしても、失礼があってもいけない。


「あ、こんにちは! わたし、お姉ちゃんの紹介で来た、美香です。今日からよろしくね、結城さん♪」


 ぺこっと、おじぎをする。

 その外見と同じく、美香さんの言動もまた年齢を思わせる活発そうなものだった。

 彼女の身長はそれほど高くない。

 そりゃあ、彼女の年齢からにしてみれば、160センチの身長は規格外かもしれないけれど、成長し、男とは比べものにならないほどの力を手に入れた女の子たちと比べれば、美香さんはまだまだ子供の領域だった。

 運動が好きなのだろう。その体は魅力的に日焼けしている。

 胸もそこまで大きくない。ただ、脚だけはとても長くて、どことなく、これから発育していく萌芽のようなものを感じ取ることができた。

 つぶらな瞳が印象的で、思わずその頭を撫でてあげたくなるような、子動物のような可愛らしさ。

 しかし、僕は、昨日、佐織様に言わたことを思い出していた。


(こんな可愛らしい女の子が、男を虐めることに快感を覚えてしまうサディスシャンなのか・・・・・)


 一見すれば、天真爛漫そうに笑う元気娘にしか見えない。

 しかし、その奥には、女性としての資質が・・・・・男を支配することに喜びを覚える女の子としての資質が隠されているのだ。

 僕は、そのことをしっかりと認識しながら、目の前の美香さんに対して口を開いた。


「では、さっそく練習にはいりましょう。美香さん着替えてきてもらえますか?」

「うん、わかったよ♪」


 次の瞬間、彼女はその場で衣服を脱ぎ始めた。

 僕は、思わず目が点になってしまいながら、彼女の長い脚と、健康そうな黒い肌を見つめることしかできなかった。

 下着姿になった彼女を、プロレス場にいるすべての男子が驚いて凝視している。

 その中を、美香さんは平然として、鼻歌まじりに着替えをしていた。


「あの、美香さん」

「ん? なあに?」

「えっと、こんなところで着替えては・・・・・その、周りの目があるので、できれば更衣室で着替えてもらいたいんですけど」

「え? 他人の目って、ここには男の子しかいないよね?」


 キョトンとする美香さんは、そのまま言葉を続けた。


「美香、別に、男の子にみられても平気だよ? だって、男の子は犬みたいなものだもんね。いくら裸みられたって、別に気にしないもん」

「・・・・・・・・」


 この歳で、すでにこの域まで達しているのは非常にめずらしいことだった。

 僕を含めた周りの男子は、初等部の女の子に人間扱いされず、舐めきられても、なにも言い返すことができなかった。


「それでは、練習をはじめましょうか」

「うん♪」


 スパッツ姿になった美香さんは、その日焼けした体を薄い布地で包んで、僕とプロレスの練習をはじめた。

 準備運動をはさんで、ブリッジや首ブリッチの練習をする。

 美香さんは、まだ初等部とはいっても、身体能力は年齢を軽く凌駕していた。

 僕が指示することをまたたく間に拾得していく。新入生男子でも手こずる首ブリッチまでも、あっさりとこなしてしまった。


「さすがですね、美香さん」

「えへへ、これくらい余裕だよ」



 元気そうに言う美香さんだった。

 その後も、基本的な技や、間接技のレクチャーが続いた。

 ふつうならば、始めたばかりの頃は、基礎体力の鍛錬だけで、技の練習などさせてもらえない。

 しかし、美香さんは特別だった。

 まだ初等部ではあったが、飲み込みが恐ろしく早いのだ。

 天性の才能。

 男と比べるのがおこがましく感じるほどの、圧倒的な能力。

 僕は、小柄な美香さんが、小さな体を躍動させながら、自分が1年ほどかけて拾得していった技術を楽々とこなしていくのを呆然と見守るしかできなかった。

 しかし、僕には理解できないことがあった。

 なぜ、美香さんは、プロレスに興味をもったのかということだ。

 現在、プロレスは、女性が観戦するものとしての、男子プロレスが主流になっている。

 現に、ぼくたちの学校のプロレス部も、女の子は一人もいない。全員が男子だった(もちろん、女の子による調教は行われている。他の部活動から派遣された女の子たちに、週に一度、徹底的な調教を受けるのだ)

 なかには、物好きな女性がプロレスにいそしんでいるが、それでも圧倒的多数の女の子たちは、ほかのもっと実践的な格闘技に興味をもつ。

 そんな中で、なぜ美香さんは、プロレスに興味をもったのだろうか。

 僕は少しだけ腑に落ちないままに、美香さんにプロレスの技を伝授していった。


「美香さん、今日はこのへんにしておきましょう」


 僕は、若干肩で息をしながら言った。

 夕方、あれほどいた部員たちは、すでにシャワーを浴びて帰宅したあとだった。

 外は真っ暗闇に染まっている中、僕と美香さんの二人だけが、プロレス場に稽古をかさねていたのだ。


「美香だったら、まだ大丈夫だよ。美香、もっと練習したい」

「なにごともやりすぎはいけません。また明日、がんばりましょう」


 女の子とはいっても、美香さんはまだ能力に目覚めていない女子児童なのだ。

 短時間の練習で、男が一年をかけて拾得していく技を軽々とこなしたとはいっても、そこには身体能力上の限界がある。


「むうう、しょうがないな〜。結城さんがそこまで言うなら・・・・」


 納得いかないようではあったが、美香さんはなんとか練習をやめてくれるようだった。


「じゃ、シャワー浴びて帰ろうかな。結城さん、背中流してね♪」

「・・・・・はい」


 美香さんは意気揚々と、シャワールームにむかう。

 彼女の体は汗でびっしょりになっている。

 健康そうな肢体に、スパッツや上着がはりついているさまは、とても扇状的だった。

 たとえ彼女が初等部生だとしても、隠しきれない魅力が、美香さんの体からは発散されていた。


「よいしょっと」


 シャワールームに着くと、美香さんは僕の視線などおかまいなしに、衣服を脱ぎ始めた。

 一糸まとわぬ裸だ。ほどよく日焼けした褐色の肌が、彼女の健康そうな魅力をさらに増している。


「なにしてるの、結城さん。ほら、背中ながしなよ」

「は、はい」


 思わず、その裸に見とれてしまった僕だった。

 彼女はやはり僕に見られることに恥ずかしさを感じないのだろう。

 胸はおろか下すら隠していない。まるっきり、男のことを同じ人間とは思っていないのだ。

 こんなサディステックな少女が、プロレスの技を覚え、男と試合をすることになったらどうなってしまうのだろう・・・・僕は、少しだけ自分の将来が不安になった。


「それでは、ながしていきます」

「うん、よろしくね♪」


 僕は、丁寧に、シャワーで美香さんの体をながしていった。

 背中から下半身にかけてを丹念に流し、清めていく。

 水滴が、美香さんの褐色の肌にはじかれていく光景を見ては、その瑞々しい肌を嫌でも感じないわけにはいかなかった。

 長く、美しい脚も丁寧に流していく。

 水が美香さんの太股を伝い、ふくらはぎをとおって地面に落ちる光景は、しだいに僕の興奮を呼び起こしていった。


「ほら、前もちゃんと!」

「は、はい」


 くるりとこちらを向いた美香さんの体。

 胸もなにも隠しておらず、無垢なる体を惜しげもなくさらす美しい少女。

 彼女の胸は、まだふくらんですらいなかった。健康的で、中性的なふくらみが、二つあるだけだ。

 美香さんは、本当に、裸を男に見られてもいいようだった。

 おそらく、自分の家でも、こうして召使いたちに、自分の体を洗わせているのだろう。

 そこには、男は女の体を洗い清めるのが当然、という、支配的な雰囲気があった。


「うん、もういいよ」


 猫のような機敏さで、美香さんはすたすたとシャワールームから更衣室にいってしまう。

 ぽたぽたと、水滴が床を濡らすのに構わず、美香さんは裸のままでロッカーの前で仁王立ちになった。


「し、しつれいします」


 僕は、自分よりも身長が低い彼女に敬語をつかい、塗れた肌をバスタオルでふいていった。

 それを、美香さんはいかにも当然とばかりに、腕をあげて脇をふかせたりさせるのだ。

 僕は、そんな美香さん支配的な態度ん、だんだんと興奮してきた。

 彼女のまだ熟れきってはいないが美しい肢体と、高圧的な態度に、僕の下半身は反応してしまうのだ。

 それは、今まで3年間、女の子から調教を受けてきた成果だった。

 僕は、年下の美香さんに、支配されたいと心の底から思っていた。


「結城さん、美香の足裏、汚れちゃったんだけど」


 美香さんは、ゆっくりとベンチに座ると、その褐色の肌をもった脚を、前に突き出して言った。


「綺麗にしてくれない?」

「はい・・・・・」


 僕の心中などお見通しだといわんばかりに、美香さんの瞳が嗜虐的に光る。

 練習中の天真爛漫さは影をひそめ、今の彼女は、男を支配することに喜びを覚える狩人でしかなかった。


「しつれいします」


 僕は、床にひざまずくと、美香さんの脚に手をそえ、その汚れてしまった足裏に舌をはわせていった。


「じゅる・・・ジュパッ・・・・・じゅるるる」


 足裏を満べんなく舐めあげ、綺麗に清めていく。

 調教された成果を見せるように、わざと卑猥な音をたてながら、僕は美香さんの足裏を丹念に舐めあげていった。

 そうだ。いま、僕が舐めているのは、少女の足なのだ。

 まだ能力の開花していない女子児童の足。

 今ならばまだ、僕よりも弱い女の子の足を、自分は一心不乱に、舐めあげているのだった。


「ジュパッ・・・・ジュジュッ・・・・・じゅるうう」


 上目づかいで、ベンチに座る美香さんのことを見上げる。

 彼女は、一糸まとわぬ裸体をさらしながら、少しも恥ずかしがることなく、僕の奉仕を見下ろしていた。

 視線を下にやれば、美香さんの尊いモノが見えるだろう。

 しかし、僕は、美香さんの瞳に釘付けにされて、目をはなすことができなかった。

 その、獲物をいたぶるような冷たい視線。

 嘲笑のためにつり上げられた、口元。

 男の僕を支配して喜びを感じている美香さんの様子に、僕は彼女が初等部であることも忘れて、心も体も支配されていった。




「じゃあ、おつかれさま! また明日よろしくね!」


 左足と右足に奉仕させ、すでに衣服を着用した美香さんが言った。


「はい、美香さん」


 僕は、従順に彼女の言葉に従う。

 にっこりと笑った無邪気な少女は、「あ、そうそう」という前置きのあとで、


「美香がシャワーからあがったとき、床ぬらしちゃったからさ、それもちゃんと拭いといてね」

「はい、もちろんです」

「うん♪ もちろん、タオルとかつかったらだめだよ? 結城さんの舌で、全部きれいに舐めとるんだからね!」


 残酷な少女の言葉だった。

 この女の子は、男を支配することに、なんのためらいもなく、自然に調教をほどこしているのだ。

 まだ初等部だというのに、美香さんの女としての本能は、相当なものがあった。


「じゃあね、また明日!」


 元気よく言い、プロレス場から去っていく美香さん。

 僕は夜遅くまで、彼女の濡らした床を、舌で綺麗にしていった。

 まるでそれは、美香さんの残した跡に、土下座をして舐めさせてもらっている、哀れな男のようだった。